“戦略的余白”を毎日に作ろう

セレンデピシャスな発見からイノベーションが多く生まれる事はよく知られる通りですが、セレンデピィティが生まれるためには一定の無計画性が必要だな、と感じます。

目的を達成するための行動ではなく、意味もなく今までは違った道を通ってみる、理由なく普段行かない街や海辺に行ってみる。英語でいう”Stroll”の概念です。こういった無計画性の中からイノベーションが生まれた例は枚挙に暇がありません。

しかしながら現代においては、ほとんどの行動は何かしらの目的を達成するための行動が多く(例えば仕事に行く、ジムに行く、飲みに行く)、計画性に溢れたルーチンの中で生活する我々にとっては、明快な理が伴わない“無計画な行動”が入り込む余地は少ないでしょう。

すなわち、無計画な時間を作るためには、一見パラドクスに聞こえますが『計画的に無計画になる時間』を設計しなければならない、という事です。これを僕は勝手に”戦略的余白“と呼んでいますが、忙しい人であればあるほどこの戦略的余白を作りづらい。また、戦略的余白を持つ事は概念的には成り立っても、忙しい現代社会においては『それがなぜ有用なのか?』を実利に立脚して説明する事は難しく、日々こなすべきタスクの前では相対的な優先順位も低いため、継続的に行うことは難しい。

しかしながら、この合理性に溢れた世の中で、非合理的な活動に意味を見出し、そこに賭ける姿勢を身につけなければ、社会レベルも会社レベルも個人レベルでも次の時代を闘っていくのは難しいのかな、と感じます。

人のパフォーマンスは流動的

人のパフォーマンスは常に揺蕩うもので、置かれた状況化によって変動する。

 

これは、コンサル時代に多数のプロジェクトを経験して感じたことだけど、パフォーマンスとは、

 

・プロジェクトの中の人との相性(上司/同僚/部下)

・プロジェクトの性質や内容(戦略/実行)

・クライアントの質やクライアントとの相性

・自分や他人のモチベーション

・メンバーの心理的安全(サイコロジカル・セーフティ)

・ライフステージ・プライベートの充実度

 

など、無限の変数で構成されている。

 

つまり、パフォーマンスとは絶対不変のものではなく、その時々よって変化するものであり、常に流動的である。

 

僕の例で言うと、クライアント/社内の執行役員から高い評価を受けたプロジェクトもあれば、人員管理がうまくいかず鬱になって抜けたプロジェクト、やった事のない領域の案件で全くバリューが出せずに挫折を味わったプロジェクト、顧客から泣きつかれ、歯をくいしばりながら全て一人で回したプロジェクトなど、本当にパフォーマンスは乱高下した。

 

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一時的なパフォーマンスの低迷にこだわらず、そういうフェーズなのだと受け流し、逆に上手くいっているときも有頂天にならないこと。また、一時的にパフォーマンスが出せていないメンバーがいたとしても、変なレッテルを貼らずに、ちゃんと輝ける場所を探すこと。

 

絶対不変の『できる/できない』ではなく、

相対的/流動的な『今回はできる/今回はできない』。

 

そういう姿勢で取り組むのが重要なのではないかと思います。

イノベーションの真髄

 

数年前に大ヒットしたパナソニックの携帯電動歯ブラシの『ポケットドルツ』。 この商品をもともと提案したのは入社2年目の若い女性社員だった、というのは有名な話。

 

しかし、立ち止まって考えてみてほしい。

これは実はすごいことだ。

 

すごいのは、社員でも、商品のアイディアでも、商品自体でもない。

 

すごいのは、『世界を代表する規模の大企業でありながら、入社2年目の若手社員のアイディアを殺さなかった』という点である。

 

察するに、これは

 

・若手の社員でも独自のアイディアを発言しやすい空気や雰囲気が社内あるいは部内にあった

・若手の意見に真摯に耳を傾け、アイディアを尊重し、事業化まで導く上長・マネジメント陣がいた

・若手の意見を拾う仕組み

 

があった と考えられる。

 

大企業に勤めた経験のある人間ならお分かり頂けると思うが、上記3点はそんなに簡単に実現できることではない(ベンチャー企業ならば当たり前かもしれないが)。 僕が新卒で入った会社などでは、『超』がつくほど体育会ということもあり、若手が発言しようものならミーティングの場が凍り付くような雰囲気だった(金融の文化なのかな・・?)。 自分のアイディアが採用されるなどもってのほか。・・というかそもそも発言しようという気すら起きなかった。

 

僕の経験をベンチマークにするわけではないが、日本のビジネス漫画を読んだり、コンサルで客先に常駐したり、先輩やら友人の話を聞いてても、こういった風潮は(少なくとも少し前までは)結構一般的なのではないかと思う。

 

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調べると、ポケットドルツが最初に発売されたのは2009年らしい。今から10年前である。 デザインシンキングやイノベーションなどのバズワードが流行る遥か昔から、パナソニックはこういったイノベーションが生まれやすい環境を構築していたのである。

 

思うに、イノベーションの真髄とは、個のアイディアがどうこうではなく、 『いかに出てきたアイディアを封殺しない空気、良いアイディアを吸収する仕組みや組織体制を構築できるか?』 という事なのではないかな、と思っている。

オキュペーションアウトではいけない

ありとあらゆる産業の『縦』の壁も、バリューチェーンの『横』の壁も崩れていく現代に於いては、秩序だったプロセスやルールを基に物事が進む、というより、様々なエコシステムのプレイヤーが混沌の中で有機的に絡み合う、いわゆる『マイクロコスモス』のような世界観ができあがりつつある。
 
従って、ビジネスの様々な『壁』が崩れてきているのに伴い、普通に考えれば、自分の職業の『壁』も崩す必要があるだろう。自分のビジネスを特定領域に限定させる、というのはもはや時代の流れに逆行する動きだ。
 
例えば、美容師という仕事は髪を切るのが仕事だが、今後の世界では『髪を切る』という行為に限定せず、『カウンセラー』や『ライフコンサルタント』といったロールも兼任するのかもしれない。技量の多少の差はあれど、『髪を切る』だけならどこでもできるが、そこにカウンセリング的な要素も加えてあげると付加価値がグッと上がる。
 
一流のウェブデザイナーは、言われた通りにただデザインをするだけではなく、『御社の商品が刺さるペルソナやセグメントを考えると、こういったビジュアルやキーコンセプトの方が良いんじゃないですか』と逆提案をし、プロモーションプランやコミュニケーション戦略、果てはブラディング戦略まで見直す、といったところまで入りこむらしい。その動き方は『ウェブデザイナー』という役割を超えて、もはや立派なコンサルタントだろう。
 
また、アメリカでは、弁護士が多すぎて、『弁護士です』と名乗るのではなく、『××の領域に関する専門家です、ビジネスコンサルもできます、ついでに弁護士の資格も持ってます』みたいな感じの動き方でないと生きていけないらしい(by 某弁護士事務所のパートナー)
 
つまり、何が言いたいかと言うと、今の時代は『職業』と『価値の提供方法』がone-to-oneで結びつくような時代ではないということ。他業界や他業種を『侵食』してはいけないということはないし、むしろどんどん他領域まで手をかけていくべきなのだろう。コンサル会社が広告代理店のビジネスにまで手を伸ばし始めたのと同じように。
 
今の世の中は『プロダクトアウトじゃないダメ』と言うのと等しく、『職業(オキュペーション)アウト』ではダメなのだろう。

ココが変だよ「働き方改革」

ふと、『働き方改革』に関する記事をネット上で読んだので、思い出したのだが、、、

僕は、国が掲げる『働き方改革』は少しズレていると思っている。

なぜズレているかと言うと、『どうやって働き方を改革するか?』という“How”の部分にばかり焦点が当たり、『なぜ働き方を改革しないといけないのか?』という“Why”の部分があまり言及されていないから。

もうちょっと具体的に説明しよう。


世の中には、2種類のタイプの人がいる。

①明確に残業をしたくない派と、②残業をしても構わない派に分かれる。
どちらでもないというニュートラル派も②に内包される。

①のタイプの人には、当然「早く帰りたい」という意思があるので、手段であるHowの部分を議論するのは意味がある(手段と言っているのは例えば『ノー残業デー』の導入とか)。

一方で、②の、大して早く帰りたくない人に対して、「どうやったら早く帰れるんだ!」「働き方をどう改革するんだ!」「残業をどう無くすんだ!」と迫ったところで、自分が興味・関心がない部分に関してのHowを問われても、全然乗り気にならないのは当然の事だ。

極論を言えば、早く帰っても友達がいないから会社に残っていたいとか、早く帰ってもする事がないから仕事の質を薄めてダラダラ仕事したいとか、あくまで一般論として、そういった人が意外と多いのではないかと思っている。

と、するなるば、残業抑制などのHow(方法論)と並行で論ずるべきは、

『そもそもどうやったら自発的に早く帰りたいという意識を持ってもらえるか?』

という”Why”の部分ではないだろうか。

じゃあ、どうやったらそのWhyの意識を持ってもらえるの?という点に関して、僕なりの見解を述べてみる。

まず、人が早く帰りたいと思う理由を大別すると5つあると思っている
※あまり深く考えて発言してないのでもっとあるかもだけど・・

a) 家庭 (子育て、介護)
b) 恋愛 (デート、合コン)
c) 趣味 (生け花やフットサル)
d) 勉強 (通学、資格や試験の勉強)
e) 信仰・宗教 (日本ではあまり該当しない)

(a)とかは結構顕著で、小さなお子さんがいる人などは、働き方改革を強要しなくても自発的に色々と工夫して効率的に帰る仕組みを考える。

(a)とは別に、例えば今回は 「(c) 趣味」 に焦点を絞ってみよう。

国として、『平日の夜でもできる趣味を持ちましょう!』と呼びかけたところであまり意味はない。

ポイントは、国として、色んな趣味を味見する場を提供してあげる事が重要なのだと思っている。そのきっかけや体験を通じて、『これは没頭できそうだ!平日の夜にもぜひ通いたい。』と思える趣味を色んな人に見つけてもらうことが目的だ。

そうは言っても、じゃあ国としては具体的にどうやってその『場』を提供すれば良いのか?

具体策を挙げてみよう。

まず、アクセスの多い主要都市(新宿、銀座)などに大きいイベントスペースを貸し切る。そこで、カテゴリー別の色んな趣味を体験できるブースを設ける。イメージとしては、デパート地下の試食エリアか、就活フェアのようなイメージ。色んな趣味を体験できるように、文化系、スポーツ系など幅広い種類の企業を誘致する。幅広くというのがポイント。
※ここでもう一つポイントなのが、都心の主要部にスペースを借りること。あくまで気軽に体験に行けるようなロケーションでないといけない。例えばビジネスの主要部から遠い立川とかにスペースを設けてもダメ

スペースを借りる場所代もバカにならないので、例えばブース出店料をオークションかリバースオークション式にして、それぞれの領域における出展企業を募集する。生け花教室を普段やっている会社がお金を払って生け花体験ブースを出すイメージ(マネタイズのモデルとしては、三越などのデパートに近い)。出展する企業としても、自社の活動を一気にアピールできて、体験ブースを通じてアップセルや会員登録などに繋げらればメリットは大きいはずだ。

こうすれば、色んな人をハッピーにして、働き方を変えるきっかけ作りを提供できるはずだ。

おさらいすると、僕の主張としては

① 働き方改革をどうやって遂行するかの手段(How)だけでなく、自発的に働き方を変えたい(Why)と思ってもらえるよう、HowとWhyの『両輪』で働き方改革を考える必要がある

② Whyを啓蒙する手段は沢山あるが、例えばそのうちの一つとして、平日の夜に通える趣味を持ってもらう事がある

③ ②を実現する手段として、例えば色んな趣味を「味見」するスペースを作り運営する事が考えられる

・・・というような事を耳鼻科に行く途中に悶々と考えてました。

花粉症つらい。