イノベーションの真髄

 

数年前に大ヒットしたパナソニックの携帯電動歯ブラシの『ポケットドルツ』。 この商品をもともと提案したのは入社2年目の若い女性社員だった、というのは有名な話。

 

しかし、立ち止まって考えてみてほしい。

これは実はすごいことだ。

 

すごいのは、社員でも、商品のアイディアでも、商品自体でもない。

 

すごいのは、『世界を代表する規模の大企業でありながら、入社2年目の若手社員のアイディアを殺さなかった』という点である。

 

察するに、これは

 

・若手の社員でも独自のアイディアを発言しやすい空気や雰囲気が社内あるいは部内にあった

・若手の意見に真摯に耳を傾け、アイディアを尊重し、事業化まで導く上長・マネジメント陣がいた

・若手の意見を拾う仕組み

 

があった と考えられる。

 

大企業に勤めた経験のある人間ならお分かり頂けると思うが、上記3点はそんなに簡単に実現できることではない(ベンチャー企業ならば当たり前かもしれないが)。 僕が新卒で入った会社などでは、『超』がつくほど体育会ということもあり、若手が発言しようものならミーティングの場が凍り付くような雰囲気だった(金融の文化なのかな・・?)。 自分のアイディアが採用されるなどもってのほか。・・というかそもそも発言しようという気すら起きなかった。

 

僕の経験をベンチマークにするわけではないが、日本のビジネス漫画を読んだり、コンサルで客先に常駐したり、先輩やら友人の話を聞いてても、こういった風潮は(少なくとも少し前までは)結構一般的なのではないかと思う。

 

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調べると、ポケットドルツが最初に発売されたのは2009年らしい。今から10年前である。 デザインシンキングやイノベーションなどのバズワードが流行る遥か昔から、パナソニックはこういったイノベーションが生まれやすい環境を構築していたのである。

 

思うに、イノベーションの真髄とは、個のアイディアがどうこうではなく、 『いかに出てきたアイディアを封殺しない空気、良いアイディアを吸収する仕組みや組織体制を構築できるか?』 という事なのではないかな、と思っている。