オキュペーションアウトではいけない

ありとあらゆる産業の『縦』の壁も、バリューチェーンの『横』の壁も崩れていく現代に於いては、秩序だったプロセスやルールを基に物事が進む、というより、様々なエコシステムのプレイヤーが混沌の中で有機的に絡み合う、いわゆる『マイクロコスモス』のような世界観ができあがりつつある。
 
従って、ビジネスの様々な『壁』が崩れてきているのに伴い、普通に考えれば、自分の職業の『壁』も崩す必要があるだろう。自分のビジネスを特定領域に限定させる、というのはもはや時代の流れに逆行する動きだ。
 
例えば、美容師という仕事は髪を切るのが仕事だが、今後の世界では『髪を切る』という行為に限定せず、『カウンセラー』や『ライフコンサルタント』といったロールも兼任するのかもしれない。技量の多少の差はあれど、『髪を切る』だけならどこでもできるが、そこにカウンセリング的な要素も加えてあげると付加価値がグッと上がる。
 
一流のウェブデザイナーは、言われた通りにただデザインをするだけではなく、『御社の商品が刺さるペルソナやセグメントを考えると、こういったビジュアルやキーコンセプトの方が良いんじゃないですか』と逆提案をし、プロモーションプランやコミュニケーション戦略、果てはブラディング戦略まで見直す、といったところまで入りこむらしい。その動き方は『ウェブデザイナー』という役割を超えて、もはや立派なコンサルタントだろう。
 
また、アメリカでは、弁護士が多すぎて、『弁護士です』と名乗るのではなく、『××の領域に関する専門家です、ビジネスコンサルもできます、ついでに弁護士の資格も持ってます』みたいな感じの動き方でないと生きていけないらしい(by 某弁護士事務所のパートナー)
 
つまり、何が言いたいかと言うと、今の時代は『職業』と『価値の提供方法』がone-to-oneで結びつくような時代ではないということ。他業界や他業種を『侵食』してはいけないということはないし、むしろどんどん他領域まで手をかけていくべきなのだろう。コンサル会社が広告代理店のビジネスにまで手を伸ばし始めたのと同じように。
 
今の世の中は『プロダクトアウトじゃないダメ』と言うのと等しく、『職業(オキュペーション)アウト』ではダメなのだろう。